> ツーリングマップル2020年版 改訂のポイント 表紙撮影[2]東北編 by 賀曽利隆
ツーリングマップル2020年版 改訂のポイント 表紙撮影[2]東北編 by 賀曽利隆
デザインを全面リニューアルした2020年版の表紙。しかしその主役がツーリングシーンを想起させる「写真」であることに変わりはありません。むしろ写真をより魅せるためのデザインにしたとも言えます。
その年の「顔」にもなる表紙写真撮影は、各エリア著者ライダー・カメラマンにとっても力の入るもの。天気が悪ければ天気が良い方に移動したり、ひたすら待ってみたり。翌日もう一度チャレンジしたり。苦労して撮って、会心の出来!と思った写真が結局使われなかったり・・・。様々なドラマがその裏にはあります。そんな、今年の表紙撮影にまつわるお話を、各エリア著者に語っていただきました。
2020年版表紙撮影よもやま話:東北編
昨日(3月3日)、『ツーリングマップル』編集部で2020年版の『ツーリングマップル東北』をもらいました。1年で一番うれしい日になりました。
帰りは小田急線のロマンスカーに乗って、解禁した缶ビールを飲みながら、出来上がった『ツーリングマップル東北』をじっくりと見せてもらいました。ということで「2020年版の表紙」について、書き連ねたいと思います。
まずは「通常版」です。
撮影地について
この写真の撮影地は、青森県の八甲田山(94H-7)。ここは酸ヶ湯温泉の「まんじゅうふかし」のすぐそばで、正面に見えているのは八甲田山の硫黄岳(1360m)です。実はこの表紙の写真を見てすぐに、
「いや~、まずいな…」
と思いました。94ページのH7に、「まんじゅうふかし」が入っていないのです。2021年版には必ず入れますが、酸ヶ湯温泉の地獄沼前の小道を入ったところにあるんです。
温泉の蒸気の通るベンチが設置されていて、ここに座るとポカポカと、じつに気持ちよく、ゴロンと横になって寝たくなります。寝たくなるだけではなく、ほんとうに5分寝をしました。
2020年版の巻末「カソリの轍2020」には、「まんじゅうふかし」で5分寝する姿が巣山カメラマンによって撮られていますので、是非ご覧ください。小冊子の巻末にも、寺崎愛さんがそのときのカソリをイラストで描いてくれています。
この写真の撮影日は2019年6月20日。巣山カメラマンには3日間、同行してもらいましたが、その第3日目の撮影です。「カソリの轍2020」も第3日目の行程を追ったものです。
撮られたつもりのない写真
実を言うとこの表紙写真、ぼくにとってはまったくの偶然から生まれたものなんです。「まんじゅうふかし」でゴロンと横になり、5分寝を楽しんだあとで、巣山カメラマンと
「硫黄岳をバックにした走行写真を撮ろう!」
ということになりました。そこで、バイクを回転させたのですが、その瞬間がこの写真なのです。ぼくは、まったく撮られたのがわかりませんでした。
そのとき「撮ろう」とした方の写真は「カソリの轍2020」に収録されています。「まんじゅうふかし」の次に載っている、硫黄岳を背に、こちらに向かってくる写真がそれです。発売したら確認してみてください。
それにしても、このような偶然の一瞬を見逃さずに撮った巣山カメラマンはさすがですよ。
そして、編集部(幻)さんと、デザイナー大熊さんは、よくぞこの写真に目をつけてくれました。ぼく自身、まったく予期しなかった表紙写真だったので、この写真が八甲田だとわかるまでに時間がかかったほどです。
この走り出す瞬間がすごくいいですね。「さー、行くぞ!」という自分自身の気持ちが、ライダーのみなさんにお伝えできているように思います。
『ツーリングマップル』編集部(幻)さんへのお願い
八甲田山が表紙になったから言うのではありませんが、ぜひとも巻末の拡大図に、「岩木山」につづいて「八甲田山」を入れてくださいよ。お願いしますね。
つづいて「R版」です。
撮影地について
こちらは秋田県の男鹿半島(70 I-4)。男鹿水族館「GAO」のすぐ近くです。登り坂のコーナーで、背景の海は「戸賀湾」。ここからの男鹿半島西海岸は、東北のハイライトシーンです。
ちなみに裏表紙は山形県の三瀬海岸(43 I-4)です。国道7号の三瀬の交差点からわずかに入ったところです。三瀬海岸の巨岩・奇岩には目を奪われますね。
撮影したのは2019年6月18日で、巣山カメラマンに同行してもらった3日間のうち、表表紙、裏表紙ともにその第1日目でした。
表紙が10年分くらい作れる撮影行!
「カソリ&巣山コンビ」のすごさを紹介しましょう。
巣山さんとは6月18日の朝6時、国道7号の新潟・山形の県境で待ち合わせました。山形県内の日本海側が今回一番のメインテーマでした。裏表紙になった三瀬海岸をはじめ、由良から加茂への「庄内夕陽街道」、「湯野浜温泉」、「最上川河口」、「酒田」、「鳥海山」と、どれもが表紙になってもおかしくない写真を多数、撮りました。
ところが「道の駅鳥海」で昼食をとっていると、この頃から天気が怪しくなってきたのです。ただこの時点では、北は晴れていました。そこで「超晴男コンビ」のカソリ&巣山はすぐに決断。高速を使って一気に男鹿半島へと舞台を移したのです。
これが大正解。男鹿半島は晴天。きれいな青空が広がっていました。その日の夕日は能代で見ましたが、米代川の河口に落ちていく夕日はすばらしいものでした。2019年版表紙の下北半島の夕日がなければ、ぜひとも表紙にしてもらいたいような夕日でした。夕日には徹底的にこだわるカソリ&巣山なのです。
さすがに2年連続で夕日の表紙にはできなかったようですが、2020年版の表紙は一転、青い海と青い空と、ブルー&ホワイトのSV650がじつにうまくマッチしていますよね。
『ツーリングマップル』編集部(幻)さんへのお願い
男鹿半島が表紙になったから言うのではありませんが、ぜひとも巻末の拡大図に、「鳥海ブルーライン」のあとに「男鹿半島」を入れてくださいよ。お願いします。
車両等のこと
今回は日本海が一番の舞台だったので、SV650のブルーがじつによく映えました。青い海と青い空、青いバイク。ウエアの風魔プラスワンのジャケットもブルーなのですごく統一感があったように思います。
▲青い海、青い空、青いバイクと青いジャケット
3/1152!
そういうわけで、巣山カメラマンは計3日間同行してくれましたが、受け取った写真は第1日目が455枚、第2日目が399枚、第3日目は298枚です。合計すると1152枚。そのうちの3枚だけが表紙に使われた訳です。残りの1149枚も自信があったのだけどなぁ…。
これまでの表紙を振り返って
ここで、過去20年以上続くツーリングマップルの表紙を振り返ってみましょう。
何といっても、1997年発行の初代『ツーリングマップル』は懐かしいです。巻頭で数ページ続く写真ページは同行の桑原さんが撮ってくれたものです。その翌年に発行された「全国版」と並べて写真を撮ってみました。
▲東北版の初版と「全日本」※撮影は北海道担当の小原さん
▲東北版の巻頭に収録されていた写真ページ(若い!でもやってることは何も変わってないような気も…※編注2018年版より、東北版の巻末に収録している「カソリの〇〇」は、この初版をオマージュして作っているものです)
次に2001年発行の『ツーリングマップル東北』から2019年版までをズラズラッと並べてみました。すごい迫力です。胸がジーンとしてきます。
▲左上が2001年版。その隣が2003年版。以後毎年表紙デザイン&写真が変わっている。
最後にデザイナー、編集部(幻)さんへは感謝、感謝です!編集部(幻)さんから「今後、撮ってみたい場所」を聞かれましたが、東北ならばどこでもOK!
どこでも絵になりますよ!